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高齢者の足の付け根の骨折は種類や手術方法が違い、復帰の期間も違う!

あらすじ
しおりさんの母であるトメ子さんが転倒され、足の付け根が骨折したと連絡が入りました。足の付け根の骨折というのは高齢者にとってそう少なくない骨折の一つであり、今後の生活に大きく影響が考えられます。今回は大腿部頚部骨折と大腿部転子部骨折について解説します。
1. 骨折の種類
「大変です!母が脚の付け根を骨折して入院になってしまいました。この骨折って治るんでしょうか?」
「大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折は、どちらも脚の付け根、つまり股関節の近くの骨折です。ただし、骨の位置や性質が違うので、治療法やその後の回復に違いがあります。」
「どう違うんですか?」
「具体的に説明しますね。」
(一) 大腿骨頚部骨折
- 股関節の関節包という袋の内側にある部分の骨折。
- 骨の表面にある外骨膜がなく、骨癒合が非常に難しい。
- 骨を栄養する細い動脈が損傷すると、骨頭壊死(えし)や遅発性骨頭陥没が起こるリスクが高い。
「このため、大腿骨頚部骨折は骨癒合が難しく、治療が大変なケースが多いです。」
(二) 大腿骨転子部骨折
- 関節包の外側に位置する部分の骨折。
- 周囲に血行のよい筋肉組織があり、骨癒合がしやすい。
- 骨頭壊死や偽関節になる可能性は低いが、重度の骨折ではリスクが増す。
「大腿骨転子部骨折は骨癒合が比較的スムーズに進むことが多いですね。」
2. 手術方法と痛みの違い
「治療法も違うんですか?痛みも違うんでしょうか?」
「はい、骨折の種類によって手術法や痛みの感じ方も異なります。」
「具体的にはどんな感じですか?」
(一) 大腿骨頚部骨折の手術
- 人工骨頭置換術(関節の一部を人工物に置き換える)。
- 全人工股関節置換術(関節全体を人工物に置き換える)。
- 骨癒合が難しいため、人工関節を用いることが多い。
- 手術後の痛みは比較的軽減されやすいが、リハビリの負担は大きい。
「上記の通り、人工って書かれていますよね?この手術では、骨折部分を人工の部品で置き換えることで歩行機能を回復させます。」
(二) 大腿骨転子部骨折の手術
- スクリュー固定術(ボルトで骨を固定する)。
- 髄内釘固定術(骨の内部に金属の棒を挿入して固定する)。
- 骨癒合が期待できるため、自分の骨を活かした治療が一般的。
- 手術後の痛みは比較的強く、早期リハビリが必要。
「こちらは、ボルトや釘と書いてある通りに元々ある骨を金属で固定することで骨がくっつくようにする手術になります。」
「なるほど、手術方法も全然違うんですね。」
3. リハビリ期間と回復の見通し
「母が元通りに歩けるようになるのか心配です。」
「回復には時間がかかりますが、適切なリハビリで大きく改善することが期待できます。」
「どれくらいかかるものなんでしょうか?」
(一) 大腿骨頚部骨折の場合
- 手術翌日からベッド上で座位訓練を開始できるが、リハビリは長期間必要。
- 早期の起立・歩行訓練が求められるが、完全な回復は50%程度。
- 術後、弱い力で折れやすい。
- 脱臼しやすい姿勢があり、動きに制限があるので注意。
「頚部骨折の方は、再発リスクもあることや後方からメスをいれる手術が主(中には前方から行える医師もいる)であることで、日常生活の中でやっちゃいけない姿勢がでてきます。」
(二) 大腿骨転子部骨折の場合
- 骨癒合が期待でき、リハビリ期間は比較的短い。
- 手術後から骨がくっつくまでに時間かかり、痛みも強い。
- 受傷前の活動能力が回復の鍵。
- 術後、弱い力では折れにくい。
「なるほど、どちらが良いって問題ではなくそれぞれ復帰するまでに大変なんですね。」
4. 注意事項と再発防止
「再び骨折しないためにできることはありますか?」
「骨粗鬆症の治療や転倒防止策が重要です。」
(一) 骨粗鬆症の治療
- 骨密度を高める薬物療法。
- カルシウムやビタミンDの摂取。
- 骨折リスクを軽減するための適切な運動。
「骨を丈夫に保つことが重要です。」
(二) 転倒防止策
- 家庭内の危険箇所を取り除く(滑りやすい床、段差など)。
- 履きやすい靴や歩行補助具の活用。
- 筋力トレーニングで体のバランスを改善。
「家の中も見直してみます!」
5. 生命予後と合併症のリスク
「骨折は命にも関わると聞いたのですが……。」
「高齢者の骨折は、手術だけでなく全身状態の管理も大切です。」
- 骨折後1年以内の死亡率は10%程度(日本の場合)。
- 術後の肺炎や循環器疾患などの合併症が主なリスク。
- 早期退院や適切なケアが予後を大きく左右する。
「手術だけで終わりではないんですね。」
「はい、なので退院するまでは病院がバックアップしてくれますが、その後は家に帰ってからも継続的なリハビリが必要なのでデイケア(通所リハビリテーション)や訪問リハビリ、福祉用具の活用が最も必要とされます。」
まとめ
大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折は、同じ脚の付け根の骨折でも、治療法や回復期間、注意事項が大きく異なります。トメ子さんのように突然の骨折で戸惑うこともあるかと思いますが、適切な治療とリハビリを通じて回復を目指すことができます。骨粗鬆症の予防や転倒防止策を取り入れながら、再発防止に努めていきましょう!
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ブログ記事担当:ケアマネいそ
デイケアこもれび相談員&居宅介護支援事業所
ケアマネージャー 磯村 拓矢